① データの参照元(社内基幹/外部データ)
② G2 営業情報基盤(SFA/BI ハブ)
③ G1 需給予測コアエンジン
④ データの参照先(画面・意思決定)
⑤ 監査ログ・履歴
関連(参照・所属)
主要データフロー
※ ④参照先(V01〜V06)は厳密には「データベースのエンティティ」ではなく「アプリケーション画面(View)」ですが、データの行き先を理解しやすくするため本図では同じ図中に併記しています。論理ER設計フェーズでは画面定義書として別文書化されます。
読み方ガイド
左から右へ「データの流れ」を読みます。左端の ①参照元(社内基幹・外部の生データ)から、中央の ②G2 営業情報基盤(営業活動を一元管理する箱)と ③G1 需給予測コアエンジン(AIが予測値を出す箱)を経て、右端の ④参照先(営業・経営が日々見る画面と判断)に到達します。
本システムの設計思想(v0.3で確定)
AIが予測 → ヒトが承認 → 実行 という分業を貫きます。需要予測値は「過去の事実」「未来の予測(天候・相場)」「未来の予定(販促・商談で得た事象)」を勘案してヒトを介在させずAIが算出。ヒトの役割は E08 承認ゲート でAI予測値を承認・差戻し・修正することのみで、これが「商人としての承認権限と最終責任」となります。商談履歴・店頭ラウンディングは「営業の感覚」ではなく「事象」として AI予測モデルの説明変数に直接流れます。
2種類の線の違い
- 細い実線(関連・参照・所属):エンティティ同士の参照関係を示します。「取引先マスタが商談履歴に紐付く」「販売実績が経営ダッシュボードで使われる」など、データを 参照 する関係です。データそのものの大量移動は伴いません。
- 太い赤の点線(主要データフロー):システムの動作上、定期的に大量のデータが実際に 流れる 経路を示します。本案件で最も重要な E11 コアエンジン → E08 承認ゲート → E14/E15/E16 実行ビュー の縦の流れが、新方針の中核です。
各箱(エンティティ)をクリックすると、画面右下にパネルが現れ、「保持する項目」「データの流入元」「流出先」が表示されます。
補足図:処理サイクルの時系列
ER図は「データがどこに置かれているか」を示すもので、「いつ動くか」までは表現できません。本図では実際の業務サイクル(日次・週次・危機時・継続)における処理の流れを時系列で示します。
参照元(データ取込)
G2 情報蓄積
G1 AI処理・承認
実行系展開
監査ログ
補足解説:なぜ「LSTM/Prophet/XGBoost のアンサンブル」を採用するのか
E11 需給予測コアエンジン の中核アルゴリズムについて
需要予測の精度は、本案件の成否を左右する最も重要な技術ポイントです。卵の販売数量は 「過去の販売パターン(季節性・週次変動)」「相場・天候・販促などの外部要因」「商談で得られる先行情報(特売予定・新規SKU導入)」の3種類の情報から立体的に決まります。1つのアルゴリズムだけではこの3種類すべてを捉えきれないため、それぞれが得意な3つのモデルを組み合わせる「アンサンブル」方式を採用します。
Prophet
Meta(旧Facebook)社製・OSS
得意:季節性とイベントの捕捉。年間サイクル(12月需要ピーク・夏低)、母の日/お盆/年末などのイベントを「祝日効果」として明示的に扱える。
役割:卵の年間相場サイクルやキャンペーン期の特需を捉えるベースライン予測。
XGBoost
勾配ブースティング決定木
得意:多数の説明変数(相場・天候・販促・競合価格・LTV等)を同時に評価し、変数間の複雑な相互作用を学習。
役割:「相場が上がり、かつ気温が下がり、かつ特売が重なる」のような複合条件下での需要変動を捕捉。
LSTM
深層学習・リカレントニューラルネットワーク
得意:時系列データの「文脈」「直前の流れ」を記憶しながら次を予測。鳥インフル発生後の回復軌道など、過去の事例パターンの再現に強い。
役割:需給ショック後の動的な戻り方を捕捉。データ量が十分あるSKUで高精度。
なぜ3つを「アンサンブル(組み合わせ)」するのか
3つのモデルそれぞれが得意領域・苦手領域を持ちます。Prophetは季節パターンに強い反面、複雑な変数間の相互作用は捉えにくい。XGBoostは変数の影響度評価に優れる反面、長期トレンドの自然な外挿は苦手。LSTMは時系列の動的変化に強い反面、データが少ないSKU・新商品では性能が落ちます。3つの予測値を加重平均することで、「どれか1つが外しても、他の2つが補正する」頑健な予測が実現できます。これは食品・小売業界の需要予測で実績のある定番構成で、マルイ豆腐・納豆事例(精度96.3%)などでも採用されています。
他の候補との比較
| 候補方式 |
メリット |
デメリット・採用しない理由 |
本案:3モデル アンサンブル |
3種の情報源(季節性・外部変数・時系列文脈)すべてを統合。1つのモデルが外しても他で補正可能で頑健。食品業界の標準構成。 |
3モデル分の学習・運用コスト。チューニングとモデル間の重み調整が必要。 |
従来統計モデル (ARIMA/指数平滑等) |
実装シンプル、計算軽量、解釈しやすい。 |
外部変数(相場・天候・鳥インフル)を扱いにくく、急変への追従が遅い。日配品の精度には不十分。 |
大規模Transformer (基盤モデル系) |
最先端の表現力。長期依存も学習可能。 |
必要データ量・GPUコストが大きい。同社のSKU・取引先別データ量では過剰スペックでROIが見合わない。 |
| LSTM単体 |
時系列の動的パターンに強い。 |
外部変数の解釈性が低く「なぜこの予測値か」を営業に説明しにくい。新商品・低頻度SKUで性能が出ない。 |
| XGBoost単体 |
変数寄与度が見えやすく説明性が高い。 |
時系列の連続性を陽に扱わず、長期トレンド外挿で歪みが出やすい。 |
SCM製品の 標準予測機能 (RELEX等) |
製品買えば即利用可、ベンダー保守。 |
アルゴリズム内部はブラックボックス。鶏卵業界固有の変数(相場連動・鳥インフル)チューニングは別途カスタムが必要となるため、結局アンサンブル設計の知見は必要。 |
方式選定の前提 本構成は概念設計段階の方針です。最終的なモデル構成は、PoC段階で実データを用いて精度(MAPE)・運用容易性・説明性を比較検証した上で確定します。SCM製品を採用する場合は、製品標準機能とカスタムアンサンブルのいずれを採用するかを製品評価とあわせて決定します。